いすゞジェミニ街の遊撃手に捧ぐ

1983年の元旦から放映され、瞬く間にヒットCMになったいすゞジェミニの新TVCMシリーズ「街の遊撃手」。6年間に亘った撮影の裏側を紹介します。

必見! 決死の川ジャンプ。

放映期間:1989年6月~9月   撮影時期:1988年9月
使用楽曲:ボルサリーノのテーマ/クロード・ボラン
撮影場所:Pont Louis Philippe、lille、Place Jacobin(Le Man)

川を飛び越えるシーンは緊張感いっぱい。ホップ・ステップ・ジャンプ篇メイキングビデオ(6分10秒)



ホップ・ステップ・ジャンプ篇30秒CM、15秒CMもご覧ください。


ジェミニCMのカーアクションをワルツ篇からずっと担当してくれたレミー・ジュリアン・アクションチームが、
そのスタントテクニックをすべて結集して挑んだ作品が、このホップ・ステップ・ジャンプ篇ではないでしょうか。

まず、「ホップ」シーンのアクション。
撮影は、サン・ルイ島セーヌ川右岸の間に架かっているルイ・フィリップ橋で、2台のジェミニが交互に
飛び跳ねながら橋を渡るところからスタートです。
ジェミニをトビウオが跳ねているように見せるために、橋全体に3角形の跳び箱を2列に3個づつ設置する
作業に4時間。
橋の欄干の隙間から跳び箱が見えるので、欄干すべてに目隠しをすること1時間。
朝6時に集合しても撮影開始は午後です。
しかもノートルダム寺院に近いこともあり、クルマは混むし、見物客は多いしでリハーサルは滞り勝ち・・・。
赤信号でも安全の確認が出来れば平気で渡ろうとする人がこの国には多すぎます。
青信号になったので助走して1個目のジャンプ台へ進もうとすると見物客が横断してきます。
警察官を配置して事故の起こらないようにガードしていても、自分勝手の判断で飛び出す人がいるし。
今までの中で一番のピリピリムードでの撮影でしたが、なんとか撮影できました。

イメージ 1

次は、「ステップ」シーンのアクション。
撮影地は、パリから北へ約250km。ベルギーとの国境付近のリール市。
運河に船を浮かべ、岸からその船の上に一度跳んで、更に向こう岸までジャンプするという離れ業の撮影です。
ジェミニのCMでは過去にも危険を伴う撮影を幾度となく敢行してきましたが、このシーンの撮影が最も
デンジャラスな撮影であったことは間違いありません。
今まではどんなにアクロバティックな撮影であってもレミーチームには笑顔がありましたが、
この船ジャンプのシーンでは流石に緊張感が漂っていました。

まず、手前側の岸にジャンプ台を設置しますが、
発射角度は既にレミーチームのファクトリーで計算済みなのでそれに合わせて調整します。
しかし着地側である船の方がなかなか所定の位置に落ち着きません。
クルマと違って船は液体の上にいるので、なかなか位置決めが難しいのです。
とにかく命が懸かっているので、ここは時間を掛けてしっかり準備です。
また、このジャンプは2台のジェミニが1列で次々にジャンプするという技なので、
どれぐらいの間隔をあけて2台がジャンプ台から発進すれば衝突せずに船まで届くのか、念には念を入れての
テストの繰り返しです。
そして、向こう岸。
ジャンプの着地場所には、いつものダンボール箱。・・・約300個のダンボールが積まれました。
そして段ボール箱の下にはビニールシート。 
さあ、・・・・・・すべてが整いました。万が一の時のため潜水夫も船の周りの水中に待機。
緊張が走ります。

辺りが一瞬! 静かになった時、
発射台の手前約100mほどの所から全速力で2台のジェミニがスタートしました。
ガタン、ガッタンという音と共にジェミニが発射、船にいったん着地して・・・さらに向こう岸へ。
ドーンとか、ガッシャーーンという音。
ズル、ズル、ズル~という轟音でジェミニダンボールの中へ突入です。
全員、駆け寄りました。
ドライバーは無事のようです。
スタッフや見物客から拍手、拍手が沸き起こりました。
ジェミニのフロントがゆがみ、ガラスが割れましたがドライバーに怪我は無く無事撮影が終了。
本当にそばにいてハラハラしました。

イメージ 2

最後は、「ジャンプ」シーンのアクションです。
撮影は、ルマン24時間レースの車検場として有名なルマン市ジャコバン広場です。
広場中央に人工の池と噴水を作りました。
その噴水の水を切るようにして2台のジェミニが上下に重なってジャンプしてくるというものです。
ジャンプは2台のジェミニが上下でクロスするように跳ぶのですが、上空でジェミニ同士が衝突などしたら大変で、
これもステップシーンの撮影と同じような緊張感の中で準備とリハーサルが行われました。
特に問題は、ジャコバン広場が若干狭いため発射台までの助走距離をとれないことです。
で、広場の外の一般公道からスタートするという許可を申請し、なんとか助走は確保できそうです。
そして、スタート。・・・
ド、ド、ド、ド、ドッ。ピシッ!(水を切る音) ダ~~ッとダンボールへ。
上空の2台のジェミニがぶつかりそうなのがわかるでしょうか。
上側の赤いジェミニの発射速度が想定より低いままジャンプしたので高度も予定より低くなってしまい、下を飛ぶ青のジェミニとぶつかりそうになったとのことでした。
本当に危なかったです。

カースタントの醍醐味を満喫させてくれるホップ・ステップ・ジャンプ篇。ヒット作に加わったようです。